ホセンさんは1年前入学した84人の学生のうち、ただ1人バングラデシュから入学した生徒です。来日前に日本語をしっかり勉強して来た様子は、来日後すぐに行ったゆうちょ銀行口座開設の場でも落ち着いて対応していたことからもうかがえました。

そして1年経ち、今年の入学式の場では、在校生代表として、新入生の皆さんに先輩学生からの心温まる励ましのメッセージを送りました。今はバングラデシュからの留学生はホセンさんを含めて9人になりました。

筆者は以前バングラデシュで仕事をしていた経験から、バングラデシュ国内の様々な地方都市の地方自治体やNGOなどで働く地元の方々と交流する中で、真摯に仕事に向き合い、社会の様々な課題を解決するために他国のパートナーと一緒に奮闘する姿に触れ、現地の文化と風土に親しみました。その時の様々なふれあいを懐かしく思い出しながら、ホセンさんを紹介したいと思います。

【バングラデシュの若者の問題】

現在バングラデシュは、反政府運動により退陣した前ハシナ政権に代わり、2024年9月から※グラミン銀行の創設者でありノーベル平和賞を受賞したムハンマド・ユヌス氏が首席顧問として暫定政権を率いています。インドの東側、ミャンマーの西側に位置し、人口は1億7千万人で、いつの間にか日本の人口より多くなり、近年高い経済成長を続けています。国民の平均年齢は27.6歳、若者が多く教育熱心な国ですが、都市部と農村部では経済格差が大きく、大学などで高等教育を受けても、安定した職に就けず低賃金の労働を強いられ、貧困から抜けられず経済格差も解消されないという現状があります。そのため、国外で働きたい、海外留学したい、と考える若者が年々増加しています。

※ユヌス氏が、貧困削減を目的に、主に農村部の貧困層を対象として無担保で少額融資を行うマイクロクレジットと呼ばれる仕組みを用いて設立した銀行。現在ではこのシステムの流れをくむ「グラミン日本」も創設されています。

【ホセンさんの夢】

ホセンさんは、首都ダッカからバスで南へ4~5時間にある町、ラクシュミプールの出身です。将来は、自国で車の会社を作りたいと思っています。それは、父が車好きで、よくレンタカーを借りて一緒に自動車であちこちへ連れて行ってくれていたので、自分も車が好きになり、いつか自動車に関係するビジネスに就くことを夢見るようになったそうです。バングラデシュ国内で見かける自動車は日本車がほとんど。トヨタ、日産、ホンダが有名で、日本の中古車の輸入ビジネスも盛んです。ホセンさんはJAC教育学院卒業後、ビジネスについて学ぶために大学に入って、将来は自身の会社を設立することを夢見ています。

【ホセンさんの日常】

昨年4月から毎日JACで日本語を学び、住まいの近くにあるコンビニでアルバイトを続けているホセンさんは、毎週金曜日に礼拝に訪れる、西成区のモスクで仲間と会い交流する時間を大切にしています。また、住まいの近くの公園で、時々サッカーをすることもストレス発散になり、最近では、様々な国の仲間が増えて楽しいそうです。 ユヌス首席顧問が2025年5月に来日し、石破首相との会談の模様がメディアに取り上げられましたが、まだまだ日本ではバングラデシュという国や社会、そこに暮らす人々の様子について正しく理解できる情報が少ないと感じます。この国の若者を代表して、周囲の人々に現状を正しく知ってもらえるように、これからも日本語能力の向上に励み成長を続けていってほしい人材です。

        インタビューに答えるホセンさん
典型的な田んぼの風景
長距離バス道路
ガンジス川のデルタ地帯にある世界遺産シュンドルボン
有名なラッシャヒのマンゴ市場
なんでもカレー味ですがそれぞれに美味しい家庭料理
農村部の小学校、男女共学
首都の中学校、男女共学
首都ダッカのメインストリート(2010)